★軍師&劉備4★
偽りの軍師 (※要注意なル劉)
忘れさせてやる
苦しみや、悲しみを
すべて忘れさせて
快楽だけを与えてやろう
「が…臥龍殿…」
快楽とは程遠い弱々しい顔で名を呼ぶ
彼に仕えるための偽りの名を――
いつものように「軍師」という役職ではなく、名前を呼ぶのは、この瞬間が公のことではなく私的な場であるからだ
その声に導かれるように肩に顔を埋める
不思議なことに、香も焚いてないはずの劉備の身体からは甘い香りがする
そしてその肌は透けるように白い
香りと白さに眩みながら、首筋に唇を付けて柔肌を吸うと、すぐに桃の花弁のような痕が残る
それを舌で愛撫するかのように舐めては、また吸い付くという行為を繰り返す
雪のように白い首筋に血が集まり、段々と全体が淡く色付いていく
時折、言葉にならない声を漏らしながら堪えるような仕草を見せる
すでに全身の血が沸いているのだろう
目元も朱に染まっている
ルパンは短く息を吐いた
そして赤く熱を持った劉備の耳に唇を寄せ、睦言を囁くようにねだった
「唇に、触れても宜しいですか」
劉備が息を詰め、身を固くしたのが分かった
だが拒絶の言葉はない
それを無言の許可と受け取り、言葉通りに指で触れた
親指の腹で唇をなぞると、柔らかさと温度が伝わる
ただ触れられるだけの脆弱な刺激に耐えられないのか、劉備が目を閉じた
だから、何も考えずに、そのまま唇を重ねた
劉備は反射的に身を引こうとしたが、躊躇った後で委ねるように身を寄せて来た
それを抱き止め、さらに唇を重ねる
きっと、拒絶されても、無理やりしていただろう
これ以上ないくらい優しく口付ける
舌を絡ませることもなく、互いの唇を触れ合わせるだけの幼稚な口付けだ
いつから俺はこんなに下手になったのかと、腹の底で自嘲する
わずかに啄むように唇を動すと、さらに柔らかさを実感する
温かさを分け合うように何度も唇を合わせる
「ん…」
息を漏らしたのはルパンだった
身体が熱い
唇が触れ合うだけなのに、こんなにも身体が昂ぶるなんて、まるで口付けを覚えたばかりの子供だ
しかし意思に反して全身の血が激しく駆け巡っている
突然、胸に突き刺すような痛みが走った
それだけではない
右肩がどくどくと脈打ち、異様な熱を感じる
すでに完治したはずの、あの時の傷が、劉備の熱に反応している
矢が突き立った肩と、斬られた胸に血が集まり、吼るように疼く